2024-02-15

Le bosquet 軒先花屋プレミアム イベントリポートvol.1

2024年2月7日、静岡市。数ヶ月前に張り切って申し込み、楽しみにしていたイベントが開催されました。題して「Le bosquet 軒先花屋プレミアム」。パリのトップフローリスト、ヴァンソン・レサール氏が参加者ひとりひとりの希望を聞いてライブでブーケを束ねてくれるという夢のような企画です。これはパリスタイルの師匠、斎藤由美先生が、Le bosquetルボスケ向井真由美さんの素敵なアトリエに行ってみたくて計画しました!という少人数制のプレミアムなイベント。それはもう、期待を裏切らないすごい内容でした。#夢だったのかも というハッシュタグが参加者で流行るほどに笑。リポートではヴァンソン氏が束ねた全てのブーケはもちろん、素敵なアトリエやイベントの雰囲気をたくさんの写真と共にお届けします。

ところで、最近お花を始めた方やパリスタイルに興味を持たれた方に、ヴァンソン氏や由美先生のことを少しご紹介させてください。斎藤由美先生はパリで20年以上花仕事を続け、日本に最旬のパリスタイルを届けてくださる第一人者のおひとり。そんな由美先生の長年のビジネスパートナーがヴァンソン氏です。パリ6区にローズバッドという店を構え、星付レストランや有名ブランドショップの定期装花など手がけるトップフローリストのひとりで、今年の高島屋「ばらのカレンダー」ブーケを担当、大阪と東京のホテルに支店も出すなど日本との縁も深い方です。ルボスケの真由美さんはパリ花留学の際、ローズバッドで研修生として働いた経験があり、ヴァンソン氏、由美先生とも親しい仲(由美先生、真由美さんには以前インタビューさせていただいてますので、そちらの記事もぜひご覧ください)。そんな御三方に加えてアシスタントの皆さんもローズバッド研修の経験者という、パリの風をバンバン感じられるメンバー勢揃いの今回。期待に胸を膨らませて静岡へ向かいました!

今回のイベントは2部制で、午前は準備された花材の下処理とディスプレイの研修が行われれていました。私は午後からの参加で、何人かの花仲間さんと連絡を取り合いながら静岡駅に集合、車で来ていた方のご厚意で乗せていただき、会場となる真由美さんのアトリエに向かいました。すでに何度かアトリエに来たことがある方の案内で真由美さんの畑を見学もさせてもらいながら、開始時間まで周辺を散策。全国各地から集まる花仲間同士の再会やつながりも有り難く、始まる前から楽しい時間にワクワク!静岡はすでに春の兆しがあちこちに見られ、梅や菜の花が咲き、暖かく、散歩するにはとても気持ちの良い気候。真由美さんの畑にはたくさん花をつけたミモザの大木もあり、ますますテンションも上がるのでした。

散策から戻り、どうぞと促され会場に入ると午前からの皆様がたくさんの美しい花と共に迎えてくれました。真由美さんがご主人とこだわり抜いて建てたお宅は、通り土間のように南北に抜ける広い空間があり、光と風が通る作りでとても心地よく、花たちもゆったりとくつろいでいるよう。インテリアも統一感があり、本当に素敵なお宅です。そしてこの花が、どんなブーケに紡がれていくんだろう、と想像してドキドキします。

イベントの楽しさは、同じスタイルを愛する、感性が似た方たちと集い語り合うことにもあります。SNSでは繋がっていてメッセージをやりとりしていた方と初めてお会いできたり、旧知の皆さんと再会を喜んだり。イベントに参加するたびに由美先生繋がりでのご縁が広まったり深まったりしていくのです。散歩に出てしまって戻らない主役を待ちながら笑、フランスらしい自由な進行に肩の力が抜けていくのを感じながら、お手洗いを借りたら由美先生と鉢合わせしてビックリしたり喜んだり笑、おしゃべりの時間を楽しんでいると、、

ヴァンソン氏の登場です!探しに出たアシスタントの方に連れ戻されて、ちょっと残念そう?笑。

由美先生の通訳で少しご挨拶。盛大な拍手に照れ臭そうなヴァンソン氏です。本当は人前で挨拶したり、写真を撮られたりするのが大の苦手なの、と由美先生。もう何ならすぐにでも終わらせてまた散歩に行きたい!という感じのヴァンソン氏笑、長年一緒に仕事をしている由美先生が、ヴァンソン氏が気持ちよく花と向き合えるようにトークを引き受け、早速、デモンストレーションがスタートしました。

前述のように、今回は参加者のリクエストでヴァンソン氏がブーケを束ねてくれるという内容のイベント。イベントに申し込みした順に名前を呼ばれ、由美先生の通訳で希望を伝えます。一番の方は、沈丁花のブーケをリクエスト。わあ、最初から渋い花がきた!と密かに興奮する私。沈丁花、日本では庭木としてはポピュラーですが、切花で出回ることはあまりない花です。さて、どんな花を合わせるんでしょう?

選んだのは、可愛らしいピンクのバラでした!花の色がリンクしています。

由美先生の解説を聞きながら、どんどん出来上がっていくブーケに全員、目が釘付け。ヴァンソン氏は花と向き合っていればそれに集中できるから大丈夫なんですよ、と聞いてシャッターを切りまくります笑。ヴァンソン氏の仕事やパリでのエピソードなどもユーモアたっぷりな話ぶりで紹介などしつつ、イベント始まりのまだ少し硬い空気をほぐしていく由美先生。

ドウ?ダイジョウブ?とリクエストした方に確認しながら花を選び、束ねて。沈丁花のブーケ、かわいい。。ため息がもれ、拍手が沸き起こります。こんなふうに一人ひとりに束ねてくれるなんて、なんて贅沢なんだ!とびっくり。そして、うわ〜どうしよう、どの花を選んだらいいんだろう?といきなり焦り始めました笑。だってディスプレイされている花はどれも素敵で好みで、全部選びたいくらいでしたから!

そんな焦る私をよそに、二番目の方が呼ばれて。ボルドーのパンジーをリクエスト、合わせたのはバーデンベルギア。真由美さんがプランターで育てているそうで、この後、他のブーケでも大活躍のこの蔓はアシスタントの方が切りに行って足されていました。そんなライブ感も楽しい!そして選んで無造作に持っているだけでもうブーケのように美しい。。

ですがもちろん、そのままブーケにするわけもなく、きちんと処理をして美しく丁寧に束ねられていきます。由美先生、進行役に通訳に、ネトワイエ(仏語でお掃除する、といった意味でいらない葉や枝分かれを処理して束ねやすく整えること)と大活躍です!真由美さんやアシスタントの皆さんも、流れを読んで次に必要な動きをされているのがさすが、息の合ったチームプレイは見ていて心地よくて。どれくらい葉っぱを残すのか、切り分け方は?とみなさんの動きを目で追います。

フリルのような花びらがかわいい!バーデンベルギアの踊るブーケ素敵すぎます。そしてYさんの笑顔も♡

三番目の方はマニョリア(仏語でモクレンの総称)をチョイス。枝物、キター!!とみんな思ったに違いありません笑、なぜならヴァンソン氏は枝物の魔術師との異名を取るほど、枝の使い方が素晴らしいフローリストなんです。さあ、いったい何を合わせるんでしょう?

選んだのは、こんなグリーン主体の花材たち。丸い実はフウセントウワタ、実は今の季節にはもう終わっている花材なのですが、先ほどのYさんのお庭ではまだこんなに綺麗だったそうで、今回のイベントに合わせて切って持参してくださったんです!ヴァンソン氏はフウセントウワタが好きで、パリでもよく使っている花材。やっぱり目に留まったみたいで、大活躍でした。色を混ぜすぎないので、主役のマニョリアが引き立って本当に素敵。先ほどのブーケからガラリと雰囲気が変わり、枝の切り分け方や向きなど、花材に合わせたブーケの構成がとても勉強になります。

大きなブーケの結束は股に挟んで。もはやローズバッド名物のテクニック!こうするとずれないんだそうですが、、私はまだトライできていません笑。

受け取る皆様の幸せそうなこと。マニョリア、実は2020年にパリ花短期研修に行った時、受講したヴァンソンレッスンで入っていた花材なんです(FBのアイコン写真)。私もマニョリアいいなあ、と思っていたら、、

次の方もマニョリアをリクエストして、用意されたマニョリア完売。うわあ、そうだよね〜素敵だもの!残念だけど目に焼き付けておこう。そして、この花合わせがやっぱり素敵だから、同じでいいかな?と尋ねるヴァンソン氏。もちろんいいですよ!よかった、ありがと〜のハグ。束ねていなくても持っているだけで美しい花合わせ!

ディスプレイが素敵だから、飾ってあるそのままブーケにできるよ、とヴァンソン氏。午前中、真由美さんを中心にローズバッド流のディスプレイを準備したそうで、スムーズな進行に一役買う素晴らしいディスプレイにヴァンソン氏も満足そうでした。真由美さん、参加の皆様、お見事です!

バーデンベルギアが足されました。これも素敵だなあ。。

さあ、どんどんいきます!次のリクエストはポピー。

個性的にうねるポピー。咲くと大輪のかわいい花ですが、蕾は独特の形状です。これもヴァンソン氏がよく使う花のイメージ。視線の向かう先には。。

なんと!梅を合わせました。この梅はご近所で切らせてもらった枝だそうです。梅とポピー、さあどうなるのか興味津々です。

究極にシンプルな花合わせ。これはものすごく難しい。。一本ずつ、ポピーの動きと枝のバランスを見ながら束ねていきます。ヴァンソン氏の花を扱う手の動きはとてもソフトで優しく、花たちはうっとりと魔法にかけられていくよう。決して急がないのに、迷いなく紡がれていくブーケ。ヴァンソン氏と、花が対話する世界。

ポピーの花が咲いたら、どう変化するのか!移り変わる様も愛でるブーケ。これ、今回の14個のブーケの中で強く印象に残ったもののひとつです。

こんなにもシンプルなのに、めちゃくちゃ存在感があるってすごい。。

お次は、じゃじゃ馬スイートピーを束ねるブーケ。今回のスイートピーは、岡山のファームたかおさんの農園から送られてきたもの。インタビューもさせていただきましたが、無農薬栽培に取り組む素敵な農家さんです。色の美しさと花持ちの良さが素晴らしいスイートピー。あえて整えずに育てた、奔放に伸びるじゃじゃ馬な枝スイートピーをヴァンソン氏はどう束ねるのでしょうか?

やはりシンプルな花あわせ。種類を混ぜすぎず束ねると、とても洗練されたシックなブーケになります。

枝振りを活かそうと思って束ねていたけど、やっぱり整えたほうが綺麗だと思うから切るね、と、動きが大きすぎた枝を途中で外してブーケを整えたヴァンソン氏。固執しすぎず、自分の感性を信じて見極めることも大切。

うっとり、ため息の漏れるブーケが完成しました。

ノンストップで6つ、あっという間に感じました。さあ、そろそろ乾杯しましょうか!との由美先生の声に、ふう、、と詰めていた息を吐き出して、時計を見たらそれなりの時間が経っていて。濃密な前半でした。みんな呼吸できてたかな?と思うくらいに笑

リポートもここで一呼吸入れましょう。

乾杯から後半のブーケデモンストレーションへと続きます。どうぞお楽しみに。

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