2023-02-24

コトダマと、行動と〜石橋善子さん

シックな花合わせに魅了されて飛び込んだ、パリスタイルの世界。花の学びと共に、そこに集う素敵な人たちとのご縁は私の中で大きな宝となっています。

パリスタイルで出会った人はどうしてみんな魅力的なのかな?日々、どんなことを考えながら過ごしているんだろう。ぜひ聞いてみたい!そんな気持ちが高まって、インタビューをお願いしました。思った通りワクワクするお話ばかり!皆さんにもぜひ、そのエッセンスをお伝えしたいと思います。

第8回は、日常を豊かに彩る花とテーブルレッスン等、様々に花仕事を展開されている石橋善子さんです。

始まりは習い事だった

短大を卒業し、就職して普通のOLやってました、という善子さん。働きながら花を習い始めたことが、その後の道を決めるきっかけとなりました。結婚して地元を離れ、東京へ引っ越してからも花を習うことはやめず、子育ての傍ら続けたとのこと。そして少しずつ繋がったご縁とチャンスを活かし、やりたかった皮革テーブルウェアの企画、販売など花から派生した仕事にも広げていきました。私が善子さんを知ったのも、斎藤由美さんコラボのシザーケースを購入したのがきっかけ。もともとは皮革製品を扱う方なのかな?と思っていたのですが、今回その背景も伺いました。

現在はrcopeauxという屋号で定期装花、フラワーレッスン、テーブルセッティングレッスンなどを行う傍ら、raffinee les fleurs 金山幸恵さんのアシスタントとして忙しい日々を過ごしてみえます。とてもご活躍の善子さんですが、お話を聞くと、自分のやりたいように動けるようになったのはつい一昨年くらいからですよ、とのこと。早くから花を学び、皮革製品の販売もされてご自分の思う道を進んでいるように思っていましたが、どうして?そこには善子さんなりのルールがありました。花から始まり、なぜテーブルセッティングのレッスンを始めたのか、家庭とのバランスなど女性ならではの悩みをどう乗り越えたのか。そしてスタッフとして参加した、斎藤由美さん帰国イベントの裏話もたっぷり伺いました!

掲載写真は、実際に受講したテーブルレッスンの際に撮影したものです。

花からつながる

レザーのクロス!花が映えて素敵。

加納(以下K):善子さんといえば、斎藤由美さんのYumi SAITO Paris Diplôme 1期生の先輩、そして皮革製品を扱う方、という認識だったのですが笑、今までのこと、まずお花を始められた経緯から教えていただけますか?

善子さん(以下Y):私、元々はお洋服のスタイリストになりたかったんです。高校卒業したら専門学校に行きたいと考えていたんですけど、絵心がないと無理と言われて。デザイナーじゃなくて、スタイリストでもイラストとか絵を描けないとダメらしいんですね。それでスタイリストは諦めて、でも色や形を組み合わせることが好きだったのでフラワーアレンジメントに興味を持ち、OLをしながらお花を習いに行き始めました。最初に習ったのが芦屋の英国式アレンジメントの教室で、カリキュラムを終えてから3年くらいアシスタントも経験しました。その後、結婚して子供ができてお花は少しお休みしていたんですが、夫の転勤で東京に来てからは、たくさん素敵な先生もいらっしゃいますし、時間を作っては気になったレッスンを受けていました。ある時、知り合いの結婚式で、ご両親へ贈る花束を作ってくれないかと頼まれたんですね。引き受けたのはいいものの、それまではアレンジメントしか習ってなかったからブーケなんて出来ない!どうしよう?と焦って笑。ブーケを習える教室を探してたどり着いたのが幸恵先生のところでした。幸恵先生が、ちょうど東京にアトリエを持ってレッスンを始めた頃で。

K:じゃあ、東京アトリエの初期の頃からの生徒さんだったんですね!

Y:そうですね、以前の二子玉のアトリエにも行きました。すごく素敵な花合わせだし、何よりきっちりと分かりやすく教えてくださるので、継続してレッスンを受けたくて通いました。そしてYumi SAITO Paris のディプロマコースも受けて、、今に至る、という感じです。

K:なるほど。そしてディプロマ後輩の私が善子さんにインタビューしているわけですね笑。ディプロマ生の繋がり、ありがたいです!でも、私が最初に善子さんを知ったのは、斎藤由美さんコラボのシザーケースを買わせて頂いた時で、てっきり本業は皮革製品のデザインをされてる方なのかなと思ってたんです。バッグもひとつ買わせていただきましたが、皮革製品の販売はどういう経緯だったんですか?

Y:あれは実家の商売なんです。ハンドバッグのセミオーダーを受けて製造する会社を両親がやってたんですね。皮革を扱っていたので、シザーケースを作れないかという相談を受けたんです。それで実家と繋いで製造、販売をしました。バッグも、私の持っているものを見た友人知人からどこで売っているの?と聞かれることが増えて、そこからどんどん広がっていったんです。その頃は花よりも皮革の方がメインになってましたね。

K:革製のテーブルウェアも作ってみえましたよね。

Y:そうそう、マット作りました!革製のテーブルウェアはずっと作りたいと思っていたんですが、なかなか形に出来ずにいたところ、料理家の宮澤奈々先生とのご縁がきっかけで製品化できたんです。先生のお料理教室は常に満席でなかなか予約が取れないんですが、知り合いがレッスンに参加した時に偶然、うちで販売したカメラバッグを持っていたのに先生が目を留めて下さって。知人が私のところで買えますよ、と紹介してくれたんですね。それを聞いて、私からすぐ奈々先生にメールを送りました。そこからやりとりが始まり、実はレザーでテーブルウェアを作りたいと思っているんですが、どう思われますか?と尋ねたら、合皮で作れたらいいなとずっと思っていた、とお返事をいただいたんです。そこから両親にも入ってもらって企画、販売にこぎつけました。奈々先生の伊勢丹でのイベントやテーブルウェアフェスティバルでも紹介して頂いたので、注文も結構いただきましたが、両親が高齢になり会社をたたんでしまったのでもう作っていないんです。今でもレザーのテーブルウェア、お問合せいただくんですけど、、同じようなものも出ているんですが、作りが雑だったりするみたいで笑。でもお花をずっとやりたかったので、皮革はまたやる予定は今のところないです。

お花を習い始めたのは、スタイリストになれなかったから!意外な答えでしたが、花を続けているうちに、仕事としてやってみたいと思い始めたとのこと。継続することは、やはり力になるのですね。でも、その間も実家のお商売を活かして製品を企画、販売したりと、目の前のチャンスを逃さず、ご縁をしっかりと繋いで幅広く活動するバイタリティ、行動力がすごいです。それは今の花仕事に活かされているとも感じます。

花を始めたきっかけと、皮革製品販売についての謎?は解けました笑。が、なぜテーブルまわりに興味を持ったのか、内容にもこだわっているという、テーブルセッティングレッスンについてお聞きしてみました。

大人には知っていてほしい

様々な器を出しながら、色々なパターンを説明してもらえます

K:テーブルセッティングのレッスンもされていますが、そういったテーブルまわりのことに興味を持ったのはなぜですか?

Y:最初に花を習った先生がご自宅でレッスンされていたんですが、芦屋のとっても素敵なお宅で。インテリアも食器もこだわりが感じられ、華美ではないけど雑誌に載っているようなお宅だったんですね。こういう暮らしを普通にしてる人ってほんとにいるんだ、という感じで笑。ケースに入れて飾りたいような工芸品の器を、フラワーレッスン後のお茶の時間にサラリと出して下さって、飲み終わったら洗っておいてね〜なんて軽くおっしゃるので、こわごわ洗ったり。良いものをたくさん、触らせてもらいました。母親が器好きで元々興味はあったんですが、このお教室での経験から、日常的に上質なものを使うってすごくいいなと思ったし、さらにテーブル周りについて知りたいと思い始めました。

K:こちらのお教室では花を習ったということでしたが、テーブルセッティングについてはまた別に勉強されたんでしょうか。

Y:dining & style 山本侑貴子先生のベーシッククラスを受講しました。配膳などの基本的なことをしっかりと定着させたかったことと、先生のコーディネートが好きだったので。ベーシック修了後は、花に戻りました。どうしてかというと、テーブルコーディネートを学ぶなかで、お花の重要性を私は感じたんですね。どうしても食器やカトラリーに注目しがちですけど、花が素敵だとすごくそのテーブルが映えるんです。宮澤奈々先生も、フローリストさんにきっちり作ってもらった花を飾るとテーブルコーディネートが締まるとおっしゃっています。だから私は花をちゃんとやろうと思いました。

K:私も花をやっている人間なので、テーブルコーディネートを見るときはやはり花を見てしまいます。食器はすごく好みで素敵なのに、花がもう少しこうだったらなあ、、なんて失礼ながら思ってしまったり笑。だから善子さんの花を大切にするテーブルがとても良いなと思います。でももちろん、テーブルセッティングで一番大切なのは、食器やカトラリーの選び方や、並べ方とかですよね。

Y:そうですね、まず配膳の仕方はすごく大事です。そこをまずきっちりお伝えしたいと思っているので、レッスンではすごくうるさく言います笑。和の時、中華の時でもそれぞれ違いますし。テーブルクロスを敷いたらランチョンマットは敷かないのが正式とか。大人の方には知っていてもらいたいと思うんですよね。基本的なことを知っていて、でも今日はちょっと崩してみようっていうのはいいと思うんですけど、何も知らないで好きにやるのは違うかなと思うんです。

K:花も、基本的なことはやっぱり大事ですから。

Y:選び方については、私はみなさんがすでにお持ちの食器やカトラリーを上手に活かしてほしいという思いがあって、だから一番やりたいのは出張レッスンなんです。お宅にお邪魔して、食器棚を拝見して、好きで買ったけど上手く使いこなせていない、といったものの合わせ方をご提案するとか。今後、こういった色や形のものを買い足すといいですよ、とか。

K:よりパーソナルな、いってみればマンツーマンレッスンですね!それは知りたい方、多いんじゃないでしょうか。

Y:でもね〜、いやそんなに持ってないからお呼びできません、って言われちゃうんです笑。そういいつつ、テーブルまわりに興味がある方は何かしら素敵なものをお持ちなんですけどね!先日は、お料理教室の先生のお宅でレッスンさせて頂きました。お料理を教えているだけあって、食器も素晴らしいものをたくさんお持ちでしたが、ちょっと個性的だったり、華やかな柄物とか、料理を乗せた時のバランスが難しい、とおっしゃって。

K:確かに、お皿って単体で見ると柄物もすごく素敵でほしいなって思うんですけど、料理を乗せたところを想像すると、いや待てよ、上手く使えるかな?と不安になって、結局シンプルで無難なものが増えていきます笑。

Y:そうですよね。それで、私ならこう使いますよ、っていうアイデアをお伝えしてきました。お花も、例えばこの柄物のお皿にカラフルな花を合わせると、頭の中お花畑みたいになっちゃいますよ〜笑、シンプルに枝物だけもいいですね、とか。フラワーレッスンとはまた違った視点から、テーブルにあう花、全体のバランスを見ながらのフラワーコーディネートをしています。

K:なるほど。じゃあ、あらかじめレッスンの申し込みがあった段階で、何を知りたいか、どういうレッスンが希望かをヒヤリングして内容を決めるんですか?

Y:はい、合わせ方を知りたいお皿の写真をあらかじめ送ってもらったりします。それぞれの方のニーズに合わせたテーブルレッスンをしていきたいなと考えていますし、しっかりと準備して正しい知識をお伝えできるようにしたいと思っています。

花はシンプルに2種のみ。

お話を伺う中で、お茶は右、お菓子は左、という決まり事がうろ覚えだったことが発覚した私。あまり大切なこととは思っておらず、レッスン後のお茶菓子も気にせずお出ししていました、、。でも、それではやっぱり恥ずかしい。基本的なマナーは知っておく必要があるな、お花だけ極めていればいいや、ではダメだなということを痛感しました。だからと言って、テーブルセッティングをガッツリやりたいかと聞かれるとそこまでじゃないし。。善子さんのテーブルレッスンは、パーソナルに組み立ててくれる内容ですから、超基本的なことから学べていいなと思いました。

ということで、東京までビューンと善子さんのレッスンに行ってまいりました!まず、何か質問はありますか?と聞かれて、私は好きで少しずつ集めているアンティークの食器の合わせ方を知りたかったので、それを聞いてみました。すぐに、いくつかの例が提示され、イメージしやすいようにテーブルにたくさん並べられた器類を見せていただきながら、たくさんのアイデアを頂くことができました。その場で聞いた質問なのに、すぐに思いつくのはさすが、常にアンテナを張って勉強されているんだなあと実感。同席の方は薬膳のお教室をされている方でしたが、お料理をスムーズにお出しするためのセッティングアイデアなどをお伝えしていて、参加者一人ひとりのニーズに合わせた、まさにオーダーメイドのレッスンでした!出してくださったお料理も本当に美味しくて。素敵なテーブルでゆったりといただきながら、お話も弾み本当に楽しいひと時を過ごすことができました。今回の学び、私も今後のレッスンに役立てたいと思います、皆さまどうぞお楽しみに!

花にテーブルセッティングなど、ご自分の好きを学び続けて今につなげている善子さん。実は、一歩踏み出すきっかけをくれたのは斎藤由美さんでした。由美さんの一言から始まった現在の花仕事について、そしてスタッフとして参加した由美さん帰国イベントの裏話を伺いました!

私がやりたいのは、、

前菜、色鮮やかなサラダ

K:ご自分のお仕事と並行して、金山幸恵さんのアシスタントもされてますよね?あれは、向こうからお声がかかったんですか?

Y:そうですね、まずそれよりも先に、由美先生からお話をいただいて幸恵先生と一緒に生け込みのお仕事をさせて頂くことになったんです。私、生け込みもやりたいとずっと由美先生に話していたんですね。それを覚えて下さってたみたいで。東京でのお仕事なので、大阪にも拠点を持つ幸恵先生を東京にいてサポートできる人間、ということでお声をかけていただけました。幸恵先生と定期的に生け込みでご一緒するようになり、もし時間あるなら、ディプロマレッスンのアシスタントをしてもらえないかな、と言われたんです。

K:貴重な経験ですよね!でも、体力的には結構キツそうです。。

Y:むっちゃキツイです!!でも私、丈夫な方で手も荒れたりしないですし、アレルギーもなく熱も出さなくて。わりと大丈夫みたいです。幸恵先生にも、善子さんこんなに動けるとは思わなかった〜って言って頂きました笑。言われたことは、絶対に断らないでまずはやってみようと。生け込みでも、重い花器にたっぷり水を入れて大きな枝を投げ入れたものを、善子さんここに置いてくれる?ってサラッと言われて、マジか!?と思いながらもなんとか置いたりしてます。ハードすぎる〜ってぼやきながら笑。

K:腰に気をつけてくださいね!他に、仕入れにも同行されるんですか?

Y:基本的には仕入れは幸恵先生おひとりで行かれます。歴代のアシスタントの方達は仕入れから行ってたそうですが、私も自分の仕事ができるように配慮して下さっているのだと思います。母の日とかクリスマスのイベントとか、特に花材量が多い時は私も車を出して市場にも行きますが、普段は、アトリエでの水揚げからが私の仕事です。それから生け込みに行ったり、レッスンの時は花材を揃えたり、レッスン中のアシストをします。

K:アシスタントとして経験したことはご自分のお仕事にも役立っていると思いますか?

Y:役に立ってますね、本当、色々と学ばせてもらってます。例えば仕事の早さもそうですし、もちろん丁寧ですし、あとはレッスンで生徒さんにかける言葉がすごくわかりやすい。私なんかはレッスンでもなかなか上手く言葉で伝えられない事も多いですけど、幸恵先生の説明はすごくわかりやすい。横でつい聞き入ってしまって、なるほど、はい、はい、って私が返事していたり笑。なんとかできるようになってほしい、っていう熱量もすごいです。わかるまでずっと横について、あそこまでやってもらえるレッスン、なかなかないと思います。そういう姿勢も見習いたいです。

K:由美さんの声がけから、生け込み、そしてアシスタントと仕事の幅がぐんと広がったわけですね!でもそれは善子さんがやりたいことをちゃんと口に出して言っていたからですよね。

Y:本当に由美先生には感謝しています。実は、花とテーブルっていう食空間を自分なりに表現してみようと思えたきっかけも、由美先生からの一言だったんです。ディプロマ1期では、由美先生の一時帰国に合わせた直接レッスン後に食事会があったんですが、その料理とセッティングを私が担当することになったんです。もう気もそぞろで、由美先生とのレッスン中も食事会のことばかりが気になって笑。でもとても良い経験でしたし、その時に由美先生が「善子さん、本格的な花が生けられるケータリングの人になってもいいんじゃない?」っておっしゃったんですよ。その時は、ディプロマを修了したとはいえ花はまだまだと思ってたし、そんなの無理ですよ〜って言ってたんですが、今思えば、その由美先生の言葉が今のテーブルレッスンにつながってますね。

K:なるほど〜。そこからテーブルレッスンは始まっていたんですね!料理は独学ですか?

Y:お仕事でご一緒させていただくようになった宮澤奈々先生のレッスンに参加したり、由美先生からのご縁で繋がったお菓子教室の先生に習ったり。それらのレシピを参考に、テーブルレッスンではお料理やデザートも楽しんでいただいてます。

まさに言霊とはこのことだ!というエピソード。一貫してやりたいことを伝えていたから、覚えてもらえるし、声をかけてみようかと思ってもらえる。そしてチャンスが来たら迷わず飛び込む勇気。善子さんは私よりも歳上の方ですが、なんでもやってみる!というチャレンジ精神が素晴らしいなと感服します。年齢を言い訳にしないところは本当に見習いたいと思いました!

お花の色とリンクして美しい

K:スタッフとして参加された、斎藤由美さん一時帰国イベントのこともお聞きしたいです。イベントの発表があった時には由美さんはパリにいらっしゃったわけですけど、会場選びなどは東京にいたお二人でされたんですか?

Y:いえ、会場は由美先生が決めました。幸恵先生とご相談はされてたと思いますが。その後の会場とのやり取りなどは幸恵先生がされていて、私は補助的なことをしていました。車を出して、会場までの道のりや、駐車場からの搬入経路を確認するとか。幸恵先生ももちろんご一緒でした。全ての段取りは幸恵先生が整えてくれて、私たちは指示に従って動いていました。由美先生も、帰国されてからは同じように動いてくださいましたよ、幸恵先生、次はどうしたらいい?って聞いたりしながら笑。

K:みんなで一緒に良いものを作り上げよう、っていう雰囲気ですね。

Y:そうですね、もちろん由美先生が主役なので休める時は休んでいただきましたけど、私なんでもやるから言ってね!と気さくに声をかけてくださるし、私たちも忙しい時はお願いしていました。自分のイベントなのだから、当たり前のように自分も準備から参加するっていう姿勢が感じられました。

K:そういう方だから、みんなついて行くんですよね。

Y:ほんとそうですね。ああ、やっぱりすごい方だなあと改めて思いました。

K:お二人が大阪アトリエのディプロマレッスンに行かれていた間も、善子さんは東京で準備を進めていたんですか?

Y:その間は、自分の仕事をさせてもらいました。せっせとクリスマスリースやスワッグを作ってお届けしたり。幸恵先生に、また東京に戻ってきたらものすごく忙しくなるから今のうちに休んでおいて、とも言われました笑。

K:分刻みのスケジュールだったみたいですね。東京でのディプロマレッスンとイベントの間に、由美さんたち箱根に行かれてましたよね?SNS見ていて、あれ?東京じゃなくて箱根にいる?とびっくりしました笑

Y:そう!ディプロマレッスン終わったら夕方に箱根に移動して、次の日も午後からディプロマレッスンあるのに、大丈夫?ちゃんと帰ってきてねって思ってました笑。幸恵先生も一緒に行って残ったのは私だけだったので、ひとりアトリエに行って言われたものを準備したり掃除したりしながら、由美先生たちが戻ってくるのを待っていました。車だったので渋滞にはまったらどうしようかと不安でしたね〜。でも、ちゃんと帰ってきてくれました。とはいえ、レッスン開始15分前くらいに到着して、すぐにレッスン。すごいですよね笑、旅行に行かれていても疲れも見せず、むしろテンション高めでいつもより元気なくらいでした!

K:いや〜、さすがタフですね。ディプロマレッスンは一人3作品作るから、それを複数クラス教えるとなるとかなりのエネルギーを使いますよね。合間に箱根旅行を入れるなんて凄すぎます笑。それで翌日からはイベント2日間でしたよね。

Y:そう、朝イチでアトリエで準備して、私の車に花材を満載して会場に向かいました。後ろは全く見えないくらい笑。由美先生も幸恵先生も乗せてるし、絶対に事故はできない!と私は運転に集中してましたし、幸恵先生はきっと到着してからの段取りなんかを頭の中で考えて緊張されていたと思うんですね。そんなピリッとした空気の中、由美先生がいきなり猪木のテーマソングを流し始めて。私と幸恵先生は、ええその曲?ってちょっと顔を見合わすみたいな感じでした笑。そのあと、すぐに違う曲かけてましたけどね笑。

K:由美さんなりに、緊張をほぐそうとしてたんでしょうか笑。想像するとちょっと笑ってしまいます!イベント、私も参加しましたが、スムーズに進めるためにスタッフの皆さんには緊張感が感じられました。ああいうイベントって、つい盛り上がってしまい時間押しがちになりますから。。もちろん、とってもにこやかに和やかな物腰で、心地よく楽しい時間を過ごせました。

Y:本当に、特に幸恵先生はいろいろな所に目を配っていて、由美先生はもちろん見てるし、参加の皆さんのことも、時間も、次に移るタイミングも。うまくコントロールされていて、由美先生にあと30分で切り上げてください、ってお願いしたり。大会場で参加人数も多かったですが、おかげでトラブルもなく、いい感じに撤収まで終えることができました。由美先生が気持ちよくイベントを楽しめるように配慮されていたと思います。気遣いが素晴らしかったですね。由美先生も心強いだろうと思いました。

K:お互いへの信頼感が伝わってきますね。

Y:私もスタッフとして近くで接することができ、お二人が本当に信頼しあっているのがよくわかりました。次の日のイベントでも、幸恵先生の配慮もまた素晴らしかったですが、人数が前日よりも少なかったので由美先生もより一人一人に目を配って見えました。例えばお一人で参加されていて知り合いがいない方がいると、善子さん、あの方はこういう方だからタイミングみて話しかけてみて、と私にこっそり耳打ちされたり。乾杯の音頭で全体を盛り上げたかと思うと、個々の方に寄り添ったり、ものすごく見ていらっしゃいました。もうほんと、この人たち凄いなって改めて思いました!

トップレベルのフローリストは、やはりタフでした!過密スケジュールでも笑顔を絶やさず、むしろ元気でパワフル。ご自分たちがまず、思い切り楽しんでいるのが伝わってきます。だからこそ、周りを楽しませることができるのでしょう。そして周囲への気遣いとユーモア。上に立つ人間はこうあってほしい、自分がもしその立場ならこうありたい!と思うお二人ですね。そしていつもは見られない、イベント裏側のお話もリアルに聞かせていただき、倍楽しめたような気分になりました。

アシスタントでも様々な経験をされ、順調に花仕事を広げている善子さん。これまで悩みはなかったですか?と質問をしてみたら、いっぱい悩みましたよ!と。どうやってそれらを乗り越えてきたのか、善子さんなりのペースの取り方についても話していただきました。

今できることを続けて

絶品スペアリブ!

K:これまで一貫して好きなことを学び続けて、仕事にも繋げて、すごく順調に進めていらっしゃるように思えます。でも主婦であり、母でもありますよね。家庭とのバランス、どのようにされてきましたか?

Y:ちゃんと仕事としてやれてるなと思えるようになったのは、つい一昨年くらい、下の娘が大学に入ったくらいからです。それまでは、できる時にレッスンしたりオーダーを受けたりするような感じでした。例えば子供の受験とか、家族の転機の時は平気で仕事はお休みしていました。両方は出来なくて、今は自分のことよりも子供のことを優先したほうが、後々、後悔しないだろうと思いましたから。夫が単身赴任でワンオペ育児が長かったこともあります。

K:その間、もっと仕事をしたいとか、焦りみたいなものはなかったですか?

Y:ありました、ありました!仕事と家庭の両立ができない自分がすごく嫌になることも。できている方もたくさんいらっしゃるじゃないですか。でも、私は無理だから今は子供優先と思っていても、SNSで活躍されてる方の投稿をみては羨ましくなったり。その繰り返しでしたね。でもそんな自分が嫌で、由美先生に相談したら「女性にはそういう状況の時があるけど、焦らず、くさらずに善子さんなりに花と関わったり、細くてもいいから続けていけばいいよ」って言ってくださって。無理に頑張りすぎずに自分のペースでやればいいんだ、と思えました。

K:すごくわかります。一旦専業主婦になって、そこからまた仕事を始めるには色々とありますよね。家族の思いもありますし。逡巡する気持ち、痛いほどわかります。

Y:私も近くに両親はいなかったし、頼る人もいなかったので今は家庭、と思ってやってきました。でも、例えば子供のお友達やその親御さんも招いて食事会をしたり、母たちだけで子供を連れてバーベキューやキャンプに行ったり、そんな経験も今となっては役立っているなと思えます。家族のご飯でも、日頃からお気に入りの器を使ってしつらえたり。料理もやっぱり人に食べてもらうと嬉しいし、そうやっておもてなしをする経験を通じて、さらに食やテーブルへの興味が湧きましたから。それに飽き性で何をやっても続かなかったのに花だけは続けられて、花なら仕事にできるかもしれないと思い始めて。それらが少しずつ繋がっていったんだと思います。

K:ずっとお子さん優先でやってきて、お嬢さんが大学生になりやっと気持ちの余裕ができ、そのタイミングでお仕事も広げていかれたんですね。

Y:やっぱり随分楽になりました。早く帰らないといけない、というような時間の制約も無くなりましたし、これからどんどん仕事できるな、と思ったタイミングで由美先生から生け込みのお話を頂いたんです。さらに幸恵先生のアシスタントもさせてもらって、自分がこれから仕事をしていくための道を作ってもらっているような感覚でした。

K:善子さんが常々こうしたいと話していたから、チャンスが巡ってきたんですね

Y:時間はかかってもこうしたいなと話していたことが今、叶っているので、言ってみるもんだなと思います。私、由美先生に同じ話ばっかりしてたと思います笑。だから覚えていてもらえたのかな。あとは、迷わずに飛び込めるタイミングだったから、というのは大きいですね。

K:その時が来るまで、諦めずに続けておくのが大事ということでしょうか。そしてチャンスが来たら掴み取る。

Y:そうだと思います。子供がいるから出来ない、とか思わないように、いや、ちょっとは思ったかな笑、でも私は子供を優先してきたし、だからと言って花も全くやめてしまうのではなく、細々と続けていました。仕事にするのは無理でも、3ヶ月に一回はレッスンに行くとか、花を買ってきて自分で束ねてみるとか。今は自宅でオンラインレッスンも受講できますし、そんなふうに細くても続けていく。今は自分のブラッシュアップ、力を蓄える時なんだと思って。諦めずに続けておくのは大切だなと思います。

K:言い訳せずに、今できることを続けていくということですね。

Y:あとは周りに言い続けることですよね!友人とか、身近なひとにも。今はできないからと変に遠慮しないで言っておく。そうやって細くてもやり続けて、言い続けてきて、そうすると色んなところから声をかけてもらえるんだなと実感しています。紹介から繋がるお仕事も多いです。本当に仕事にしたいと思うなら、声に出して言い続けていくことも大事です。

K:変に遠慮しない、って大切ですね。それと家にいる間の時間の使い方も。子育て中は色々と忙しくて細切れにしか自分の時間も持てないですけど、だから段取りも上手くなったり。自分次第というのはすごく感じます。道は様々だし、子育てを優先する選択をしたのならその時間を堂々と楽しめばいいですよね。

Y:今はSNSで発信もできますし、個人で色々なことがやりやすくなってますしね、色々とやりようもあると思います。幸恵先生がディプロマを終えた時に言って下さったことですが、花の仕事をしたいと思うと、つい技術の方に意識が行きがちだけど、それだけじゃなくて自分の暮らしを美しく豊かなものにすることが大切だと。日々の暮らしを楽しんだり、好きなものを愛でたり、そういう姿勢が由美さんのスタイルを学ぶ上には大事なことで、これからも花だけじゃなくて、色んなものを見聞きして、自分を豊かにしましょうと言われました。それを聞いて、ああ、このスタイルは奥が深いなあと。花にはその人それぞれの背景までも映し出されるんだと、背筋が伸びる思いでした。

デザートは漆器でサーブ。洋にも合います。

善子さんのお話を聞いて、まるで答え合わせで正解をいただいたような感覚を覚えました。私も夫が転勤族で何度か引っ越しをして、親には頼れずいわゆるワンオペ育児。子供たちが小学校に行き始めたタイミングで少しずつ花を再開していき、そうしてもうすぐ下の娘が大学生になったら仕事もやりやすくなるな、、と思っていたので。被りすぎて笑ってしまうくらいに、善子さんのお話には共感できました。

でもそれは、ある女性のとあるストーリーであり、すべての女性に当てはまるものではありません。私のように共感した方も多いと思いますが、仕事と子育てをうまく両立している方はたくさんいますし、女性は子育て中は仕事を抑えて、子育てが終わったらまた仕事をすれば良いのだ、という受け止め方はしてほしくないのです。だって、それでは一番体力があって気力も満ちている若い頃を仕事に充てられなくなってしまうから。私は、善子さんと同じく、まずは家のこと、子供のことをきちんとやるのが最優先で、その中で時間を捻り出して花仕事をしてきました。葛藤はありましたがそのやり方が自分には合っていると思えたし、幸せも感じています。でも、子育ても仕事も大切で同等に力を注ぎたい方もいるはずですし、子育てのやり方は人それぞれで良いと思います。これからは選択肢も増え、もっと多様化していくことでしょう。

その上で、心に留めたいのは周りを幸せにする善子さんの行動です。ひとつの例として、幸恵さんのアシスタントに入る時は毎回、二人分の賄い弁当をアトリエに持参している、とのお話を聞いて心からすごいなと思いました。忙しい朝、これから水揚げの力仕事をするぞというその前に、早起きして食事のことも心配りをする。でも全然、苦じゃなさそうで、むしろ次は何を作ろうかと楽しんでいるのが伝わってくる。そういうところだな、と。誰かのため、と気負うことなくサラリと人を喜ばせることができる。どんな仕事においても一番大切なのは互いを思いやれる人間力なんだよね、と善子さんのお話を伺いながら、そんなことも思いました。

私個人としては、今後の花仕事の展開を考えていた時期に、善子さんのお話を聞けたのは色々な気づきをいただける良い機会となりました。まずは面倒がらずに日々の食卓ももう少し彩ってみようと思います笑!

善子さん、素敵なお話をどうもありがとうございました。

instagram @rcopeaux

blog rcopeaux.exblog.jp

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