2021-10-05

ここで、私らしく~向井真由美さん

真由美さん作「お花の標本」

シックな花合わせに魅了されて飛び込んだ、パリスタイルの世界。花の学びと共に、そこに集う素敵な人たちとのご縁は私の中で大きな宝となっています。

パリスタイルで出会った人はどうしてみんな魅力的なのかな?日々、どんなことを考えながら過ごしているんだろう。ぜひ聞いてみたい!そんな気持ちが高まって、インタビューをお願いしました。思った通りワクワクするお話ばかり!皆さんにもぜひ、そのエッセンスをお伝えしたいと思います。

第4回は、静岡で自然と寄り添いながら、花で暮らしを彩る楽しさを伝える向井真由美さんです。

大阪、パリ、静岡

Yumi SAITO Parisディプロマレッスン、アシスタントの真由美さん

販売員として働いていた真由美さん。仕事は楽しかったものの激務で退職、以前からやってみたかった花の仕事に転職しました。初めはアルバイトから始めた花仕事でしたが、入った会社で、インタビュー第2回に登場頂いた幸恵さんと出会います。花の仕事にまい進する中で、次第に自分もパリへ行きたいという気持ちが芽生え、会社を辞めてパリ花留学を果たしました。パリ滞在中には、ローズバッドでの研修、斎藤由美さんの著書『シャンペトルのすべて パリ・トップフローリストの花』の花材一覧表の日仏語表記を担当するなど、貴重な体験もできたそう。日本に帰国後は、幸恵さんの下でアシスタントを務めながら「le bosquet(ル・ボスケ)」という屋号で花仕事をスタート。ギフトオーダー、そしてレッスンと活動を広げていきました。その後、結婚して静岡に移住。現在は子育てをしながら、自然に寄り添うフラワーレッスン、ご自分で作った押し花を使った作品「お花の標本」シリーズの販売など、花で暮らしを彩る活動をされています。

私が真由美さんと初めて会ったのは、「Yumi SAITO Paris diplome」ディプロマ2期生として幸恵さんのレッスンに通っていた時。アシスタントとして毎回のレッスンでサポートをして下さっていました。花材を前にして眉間にしわを寄せて考え込む私たちに、そっと優しくアドバイスしてくれる真由美さんの存在はディプロマ生の癒しでした!

静岡に移住されてからは、斎藤由美さんとのコラボワークショップに参加したり、作品を買わせて頂いたり。またInstagramなどでセンスあふれる穏やかな暮らしぶりを拝見し、素敵だなあと憧れもしています。お仕事のこと、生活のこと、聞きたいことはたくさん。まずは毎日の暮らしや、現在の活動についてお話を伺いました。

自然が近い環境

作品が包まれていた布は、初挑戦の藍染のものでした!淡い水色が優しい。

加納(以下K):静岡に移住されてから、畑で植物を育てたり、それを使っての作品作りなど、より自然を身近に感じられる活動をされていて素敵だなと拝見しています。最近では藍染にもチャレンジされていましたよね?(インタビューは8月にお願いしました)

真由美さん(以下M):藍染は、いろいろと調べて動画を見つけて、その通りにやってみたんですけどあんまり思ったような色にならなくて。薄い色になってしまいました笑。

K:色を定着させるのが難しいんでしょうか?

M:それもありますし、草木染とかも、植物が育った環境で色が変わったりするらしいです。それも楽しいかなと思っています。一番目の収穫、梅雨明けの7月はじめの藍が、染料として一番しっかりしているらしいです。それを使ったんですが、うまくいかなくて笑。それで今は2番目を育てていて、今度は種を取ろうと思っています。

K:すごい!種から育てると、本当に一から手作りになりますね!レッスンでも畑で育てた植物を花材に使われてますよね。

M:まだまだですけど、畑のものも少し使ったりしています。あとは大阪の時から取引のある仲卸さんから送ってもらったりしています。

K:静岡では仕入れはどこか市場に行かれてるんですか?

M:隣の市に花市場があるんですけど、そこで買ったり、あとは東京からひいてきてるフローリストさんも多いみたいです。それと良くお話を聞いたりお世話になってるお花屋さんがあるんですが、その方も畑を借りて作っていると言ってました。

K:自分で育てる、ってちょっとした流行なんでしょうか。最近はそういう方も多くなってきてる印象ですね。うちも畑があり、ハーブとか花とか育つので、レッスンに使ったりもするんですが、少し迷いもあって。レッスンに来てくださる方は近隣の方も多いので、ご自分でも作ったりしてるかなとか、珍しいというか、あまり手に入らないような花のほうが喜んでいただけるかな、とか色々考えてしまって笑。

M:最初はやっぱり少し抵抗がありました。市場の花のほうがきれいだったりしますよね。畑からのものには虫がついていたりして、それをお客さんに出すのはどうかな?と思っていたんですが、今はそれを使うときは私が畑からとってきたから虫がいるかも、ときちんとお伝えするようにしています。あと静岡では、庭で花とか育ててる方が多いんですね。でも育てっぱなしで、それをどうやって使ったらいいか分からないっていう方も多くて。それで、ああこうやって使うといいんだ~っていう事をお伝えできるのが良いかなと思っています。

K:なるほど、うちにもあるこの花で、こんな素敵なものができるんだ!っていう気づきですね。確かにそういう提案ができますね。

M:最近は、なのでそういう抵抗はなくなりました。かえって喜んでもらえるというか、あ、これ庭で育つんだ!って言ってもらえたり。

庭に咲く花を摘んで、それを上手く飾れるようになりたい!というお声は私も頂きます。一軒家が多い地方ならではのリクエストかもしれません。たしかに、お店に並ぶ花はきれいですが、自分で育てた花を美しく飾るのも格別の喜びがあります。真由美さんはそんなニーズをうまく受け止め、パリ仕込みのセンスとうまく融合させて提案されていてとても素敵です。私も自信をもってご提案していこうと思えました!

K:ご主人のおうちが農家さんなんですか?ミカンなど「増井農園」ブランドで季節限定のネット販売もされていますよね。その土地の一角を借りて、ご自分でも植物を栽培しているんでしょうか

M:兼業農家なんです。おじいちゃんの代からで、今はお義父さんが引き継いで旦那さんが手伝いをしています。私が借りているのはおばあちゃんが農作物を作っていた畑で、ミカン畑と違って平地にあるんです笑。

K:なるほど笑。でも農家さん大変ですよね、生き物が相手だし天候にも左右されたり。結婚する時から、静岡にいったら農業を手伝うとか、私もやろう!という考えはあったんですか?

M:最初はなかったですね。農業をやっているのも知らなくて。旦那さんと知り合って、会社員ならなんとなくお休みの日とか忙しい時期とかわかるじゃないですか。それで今なら暇なんじゃないかっていうときに会える?って聞いたら「ミカン狩りに行く」って言われて。ミカン狩りってなんだ?と思って笑。付き合いだしてから、家族がミカンを作っているというのを知ったんです。でも向こうの両親から手伝ってと言われたことはないです。むしろ私の方が興味があって、やります、手伝います!っていう感じでやってます。

K:もともとそういうことに興味があったんですか?それとも話を聞いているうちに?

M:静岡に来て、自然が近くにある環境になってからですね。花はもともと好きだし仕事にもしていたので興味はあったけど、育てるということに興味を持ったのはこっちに来てからです。借りられる土地があったということも大きかったと思います。

自然が近い静岡で、旦那さんのおうちは農業をやっていて。花を仕事にしている真由美さんが、植物を育ててみたいと思うのはとてもナチュラルな流れだったんだなと思えます。その流れをすっと受け入れて、楽しみながら流れにのる真由美さんの自然体なところもまた、彼女の魅力だと感じました。

自然体な様子は、彼女の暮らしぶりからもうかがえます。まだ幼い息子さんとの暮らしもゆったりと楽しまれている様子。お仕事との両立はどうしているのか、その辺りも伺ってみました。

暮らしを大切に

以前のお住まいでのコラボWS、インテリアも素敵!

K:今はコロナ禍もあり、お子さんもいらっしゃるのでレッスンは少し抑えている感じですか?

M:基本、息子が中心の生活なので、前みたいにバリバリ仕事をすることはなく抑え気味です。産後にレッスンを再開するにあたり、この子を義母に預けられる曜日、時間にしようと思ってたんですね。でも由美さんと話したら、レッスンの時に子供がいてもいいんじゃない?と言われて、あ、そうなんだと思って。初めての方の時は預けますが、リピーターの方のレッスンでは子供がいることも。皆さん、面倒を見てくれてとてもありがたいです。

K:子供がいてもいいよって方も、きっと多いですよね。今はお子さんと共に、良いペースでお仕事できている感じでしょうか。

M:そうですね。例えば子供が生まれてから、静岡伊勢丹さんから声をかけて頂いてイベント出展させてもらったんですが、子供がいるという事に対して、すごく前向きに考えて下さるんです。預けられるときに無理のないように立っていただければ、っていう感じで、すごくやりやすいようにしてくれました。

K:それは今までの静岡での活動を見てくれて、声をかけてもらった感じだったんですか?

M:最初は百合香ちゃん(インタビュー第3回参照)が出展していて、会いに行ったんですね。そうしたら担当のマネージャーさんがぜひお話したいといってくれて。東京や他地方からのフローリストさんもですが、地元の静岡に住んで活動している方といろんな展開をしていきたいという事で、それでお話を頂きました。お花の標本の販売と、売り場に私が立てる日は生花の販売もしました。

伊勢丹のほかにも、ギャラリーでの企画展に参加されたり、お子さんがいて活動は抑えめといいつつ、しっかりと静岡に根を張り、実績をかさねてみえます。フローリストとしての実力はもちろんですが、「お花の標本」という彼女独自の作品を生み出し、ご自分の世界観をしっかりと築いているからなのかなと感じます。そんな彼女のお宅はご主人とDIYでリフォームもした古民家。以前のお住まいも素敵でしたが、Instagramの写真などに写る素敵なしつらえにセンスを感じます。毎日の暮らしのことも伺ってみました。

K:由美さんとのコラボイベント時の家からお引越しされてますよね。DIYで床を貼ったりしていたのを投稿で拝見しましたが、今の家は持ち家なんですか?

M:いえ、賃貸物件です。前の家は取り壊されることになって、立ち退かなくてはならなくなって。次に住むなら農業のお手伝いも始めたしなるべく近くにと思って、同じエリアで探したら賃貸物件として見つけました。もとに戻してくれるなら好きにしていいよ、っていう物件で。なので原状復帰も考えると、あまり大きくは変えられないんです。息子が動くようになってきたので段差とか危ないし、古い家はちょっと不便ですが、古布のキルトをかけてみたり、取り外せるようなものでなんとか工夫して居心地よくなるようにしています。

K:息子君、一歳になったんですよね!可愛い時期ですね、でも目が離せなくなってきましたよね。保育園に入れることは考えていないですか?

M:今のところは考えていないです。でも周りがじいじばあば世代というんですか、上の世代の方が多くて。可愛がってはくれるんですが、ご近所に子育てをしている同世代がいないので、ママ友もいないし笑、息子も同世代のお友達と遊ばせたいとも思うので、迷うところですね。zoomとかで昔からの友達と話したりはしてますが、やっぱり近くに、同世代の友人も欲しいかなとも思いますし。レッスンに来てくださる方には一通り子育てを経験した少し先輩の方が多くて、いろいろ教えて頂いたりして助かっています。

K:なるほど、今はお出かけも気軽にしづらいし、お友達を作るのも一苦労ですよね。。それでも周りの方に息子さんも可愛がってもらいながら、お仕事も子育ても、農業も楽しんでいるのが伝わります。大阪や、パリに留学してフローリストとして頑張っていたころとのギャップみたいなものも結構あるんじゃないかと思うんですが、もっと活動したいとか、焦りみたいなものは感じたりしないですか?

M:来た当初は、同時期にパリに留学していた子たちと自分を比べたりして、静岡に来たから、、とかもやもやした気持ちもありました。全然、知り合い居ないし、大阪にいたほうが良かったとか思ったりもしましたけど、今はこの暮しというか、ペースが自分に合っているんじゃないかと思っています。焦りとかは一切なくなりましたし、すごく楽しいです。結婚前は実家に住んでいましたから、「暮らし」ということにあまり気を留めていなかったんですね。お給料もらったら全部、服に使ったり。今は暮らしが一番大事、家族と過ごすこの家での時間がすごく大事になってきて。だから、お花もぱっと華やかにというよりは、もっと暮らしに溶け込めるようなものが提案できたらいいなって思っています。

育てた花を使うということも、暮らしに寄り添うものを提案したいという彼女の思いにつながることでした。そしてライフイベントで生活が激変する大変さは、私もですが、これを読んでくださっている方にも経験したという方が多いのではないかと思います。特に転居は一から生活を作らなくてはならず、色々なストレスも感じます。だから真由美さんのこれまでの歩みの中での葛藤はすごく共感できますし、それを乗り越えて今を楽しむ姿勢に、とても元気づけられます。

そんな真由美さんの越し方、花仕事を始めたきっかけやパリ留学のこと、もう少し知りたくなって、改めて振り返ってお話をしていただきました。

花仕事の原点

「お花の標本」ミモザの栞。紙漉きから真由美さんの手で。

K:少し話はさかのぼりますが、そもそも花を始めたきっかけは何だったんでしょう?

M:ほんとの初めは、おばあちゃんが花を育てていて、小さいころからプランターに花が咲いていて家には常に花があったという事かな。小学校の時に、先生にお花を持って行ったことがあって、すごく先生が喜んでくれたんですね。その時に、お花ってこんなに人を幸せにするんだ、ってすごく印象に残って。実際に仕事にするとは思ってなかったですけどね笑。

K:花の仕事をする前は、違うお仕事をしてたんですよね。

M:販売員をしていました。すごくノルマが厳しくて、だんだんきつくなって辞めて。一年くらいフリーターしてたんですが、そろそろちゃんと仕事につこうと思ったときに、手に職を付けたいなと考えたんです。自分のやりたいこと、ずっと続けられることをやりたいなと考えたときに、夢だったお花屋さんで勤めたいと思ってアルバイトから始めました。

K:そこで幸恵さんと出会ったんですよね?幸恵さんはどんな上司でしたか?

M:私が入った時は、幸恵さんは北海道に赴任されてたのかな?大阪に戻ってくることになって、私が所属していた販売部のチーフに就いたんです。その時に、社員を育てるプログラムがあって私も参加していたんですが、幸恵さんがその講師の一人で、それが出会いです。バリバリ仕事できて厳しかったですね笑。でも幸恵さんがいなかったら、私はここまで花の仕事をしてなかったと思います。ただ厳しくてわ~って怒るんじゃなくて、愛があるというか。

k:そうだったんですね~。でもそんな幸恵さんがパリに行って、独立されて。真由美さんもパリに行かれてましたが、やっぱり幸恵さんにも相談されたんですか?

M:私、悩み事って結論が自分の中で出るまで、あんまり周りに言わないんです笑。だから、パリに行くって決めてから、行きたいんですって幸恵さんにも相談しました。幸恵さんはその頃には自分でレッスンをされていたので、私も数回レッスンを受けさせてもらって。それでパリに行くんだったらアシスタントやらない?って言われて少しお手伝いしていました。

K:パリにはどのくらい滞在してましたか?

M:パリは10ヵ月いました。ローズバッド(斎藤由美さんのビジネスパートナーであるトップフローリスト、ヴァンソン氏の花店)には3ヵ月。本当は私が留学する時期は、ローズバッドの研修は埋まっているって言われてたんです。でもビザも取ったし、行くだけでも勉強になると思って、そのままの予定ですすめました。そうしたら出発の直前に、由美さんから急に、研修生の枠が空いたけど出来る?って連絡をもらって。それで急遽、許可証とかも急いで用意して、3月末に日本を発って、4月の頭から研修でした。

K:それはラッキーでしたね!ローズバッドでの研修の後は、他のお店にはいかなかったんですか?

M:どうしようかな、ってすごく迷ったんです。行ってすぐ3か月で目標達成というか、一番やりたかったことをやれたので。でもすぐに夏休み期間に入ったので、その間に悩もうと思って過ごしてました笑。他にも行こうかなと思ったお店はあって、履歴書も書いたんですが、やっぱりそこまでときめく花じゃなかったというか笑。せっかくパリまで来て、ときめかない店で無理に働くよりは、街並みを見たり、好きなローズバッドに行ったり、由美さんのレッスンを受けるほうが私は勉強になるんじゃないかと思って。それで他には行かず、あとは自分のやりたいことをして過ごしていました。

K:それはきっと、すごく贅沢な時間でしたよね。

M:そうですね。それまでは休みも少なくてがむしゃらに働いてきたので、パリで何もしない自分に焦ってたりもしたんですけどね。これでいいのかな、みたいな。でも友人に、これまで頑張ってきたんだからここにいる間はいいんじゃない?って言ってもらって、ああそうか、って思って。

K:その間に、由美さんの本の花材リストの翻訳もされてましたよね。

M:そうです、あれは由美さんの写真一覧のプリントをもらって、見てぱっとわかるメイン花材を日本語でまずリストアップして、それをフランス語に訳しました。わからないものもあったので、それはローズバッドに行ってヴァンソンに聞いたりして。もし他の店で働いていたら、それもできなかったと思うので良かったなと思います。

じっくりと自分の中で納得いくまで考えてから行動し、人の意見も素直に聞く。真由美さんはいつも自然体でいるように感じるのですが、それは無理をしないから、なのかもしれません。もちろん努力しないという事ではなく、あと一歩を頑張ってきたからフローリストとして成長してきたことは間違いないのですが、無理を「しすぎない」というか、そういう自分が心地よいペースを保つことで、持てる力をきちんと発揮できているのではないかと思うのです。それもまた、自分を知り、自分を活かすということ。だからこそ、静岡という新たな地で根を張り、魅力が花開いたのかな、とも思いました。

最後に、これからのことを聞いてみました。

お花の標本と、これから

縫うことも、表現のひとつに

K:パリから戻ってからはしばらく幸恵さんのところでアシスタントをされてましたよね。私たちもディプロマレッスンでお世話になりました!「ル・ボスケ」という屋号で活動を始めたのはいつからですか?

M:パリから帰ってすぐ、2014年だったかな?最初はレッスンはしていなくて、ギフトオーダーを受けていました。でもクリスマスの前に、幸恵さんが、自分はクリスマスレッスンやらないから、レッスンをしてみたら?と。やったらいいじゃん!って背中押してもらって、それでレッスンをやり始めました。

K:最初からレッスンをしなかったのはどうして?

M:私、先生っていうキャラじゃないですし笑。教えるよりも、作り出すほうを得意としていたので。今でも私、先生とは呼ばないでくださいって言ってるんですよ。自分の持っている知識はすべて伝えさせてもらってますが、基本的にはお花を楽しんでもらったり、暮らしを彩るっていうことが私の中ではメインになっているので。花に関する知識はお伝えしても、先生と生徒とかじゃなくて、楽しい時間を過ごしましょう、って思っています。

K:なるほど、上から教えるというよりは一緒に楽しみましょうということですね。それはとても真由美さんらしいように思います。今後は、たくさん生徒さんを取ってレッスンをして、というよりは作品作りを頑張っていきたい感じでしょうか?

M:作品を作るのもやっていきたいことですけど、切り花で暮らしを彩るっていうのは私の中でも大切なことなので、それは今後もレッスンでたくさんお伝えしていけたらいいなと思います。

K:花を愉しむレッスンと、お花の標本と並行してという感じなんですね。お花の標本、最初の作品はどんなものだったんでしょうか?

M:初めて作ったのはパンジーの栞でした。メッセージカードみたいなものに自分で押し花にしたパンジーをあしらって、というのが始まりで、それから自分で紙を漉いてみたりだとか、やっぱりもう少しシンプルにしてみようかなとか、自分の中で進化というか、試しながら作品を作っていってる感じです。作るという事に関しては、興味があることを色々と試したい方なのかもしれないです。あとはすごく影響されやすいというか笑。夏に、牧野富太郎さん(「日本の植物学の父」ともいわれる高知県出身の植物学者)の植物園に行って、標本をすごくたくさん見てきたんですよ。それで次はもっとシンプルな、根っことかもそのままのものを作ったりしてみたいな、とか思っています。(9月にウェブショップで販売されたお花の標本の新作は、まさにそんな作品でした!)

K:その一つとして、最初に伺った藍染もやってみたという感じなんですよね。言われてみれば、お花の標本も由美さんとのコラボレッスンの時には、よりパリ色が強かったようにも思います。やっぱり少しずつ変化していますね。

M:パリは私の原点といってもいい大切なものなので、それは根っこにはいつもあるんですけど。幸恵さんがインタビューでも言われてたことなんですけど、由美さんも変化しているので、私も自分の暮らしに合うようにじゃないですけど、そんな風に私の作るものもこれから変化していくんだと思います。

これからは静岡で、根をはり、生きていく。まなじりを決して挑んでゆくという感じではなく、緩やかな、でもしっかりとした意思が感じられます。それは強い風に吹かれても折れない、強くしなやかな柳のよう。大阪やパリで培ってきたものを土台として、その土地にあわせて育ちさらに進化していく真由美さんの姿は、これからの新しい時代の「暮らし」を体現しているようにも思いました。

おしまいに、実は真由美さんから逆インタビューを受けました。「どうしてインタビューしたものを記事にしようと思ったんですか?」。他にも何人かの方から聞かれた質問。冒頭にも書いているように、素敵な方たちとご縁を頂けたのだから、もう少し深くその方のお話を聞いてみたい、せっかくならそれを文章にして皆さんにも読んで頂きたい!と思ったことが始まりでした。まだ数回ですが、それぞれのストーリーから感じられる熱量に私が圧倒されています。そして、花という共通項で結ばれた方々のお話を重ね、紡いでいくことで見えてくる何かがあるように感じ始めました。今はうっすらとした何か、でもいずれ形にできたらいいなとも思っています。これを読んでくださる皆さんにもそれぞれ、何かを感じて受け取って頂けたら嬉しいです。

お子さんを膝にのせてあやしながら、たくさんお話を聞かせて頂きました。いい子にしてくれていたAくん、真由美さん、ありがとうございました!

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