2021-09-07

ボーダーレス~守屋百合香さん

すみれのアンティークボックス、百合香さんのshopより

シックな花合わせに魅了されて飛び込んだ、パリスタイルの世界。花の学びと共に、そこに集う素敵な人たちとのご縁は私の中で大きな宝となっています。

パリスタイルで出会った人はどうしてみんな魅力的なのかな?日々、どんなことを考えながら過ごしているんだろう。ぜひ聞いてみたい!そんな気持ちが高まって、インタビューをお願いしました。思った通りワクワクするお話ばかり!皆さんにもぜひ、そのエッセンスをお伝えしたいと思います。

第3回は、パリと東京を行き来しながら多彩な活動を行う、守屋百合香さんです。

花の導き

2016年、名古屋でのWS

秘書として働いていた百合香さんは、お友達に誘われてフラワーアレンジメントを習ったのがきっかけで、花の世界に足を踏み入れました。初めはいわゆる「フラワーアレンジメント教室」に通っていたのが、もっと違うスタイルをと探すうちに、パリスタイルに惹かれていったそう。その中でパリの由美さん(インタビュー第1回参照)を知り、お母様と旅行を兼ね、レッスンを受けにパリへ。滞在中に由美さんと話す中で、絶対にパリで花研修をするぞ!と決意したというのですから、その決断力と熱意に驚きます。その後パリスタイルのレッスンに通い、フランス語の勉強など一年の準備を経て、パリ花留学へ。帰国後はフラワーレッスンに加え、ファッション撮影やCDジャケットのフラワースタイリングなど、花仕事の幅を広げていきました。さらに文章を書くセンスも抜群で、フィガロジャポンのサイトにブログを執筆するなど、多才ぶりを発揮。パリで買い付けた花器や、蚤の市へ通い独自のセンスで選んだ小物等を販売もされています。

私が百合香さんを知ったのは、由美さんの会報などで花研修生として紹介されていたのを見てだったと思います。初めてお会いしたのは2016年、名古屋で開かれたシャンペトルブーケを束ねるワークショップに参加した時。それから、shopでお買い物させて頂いたり、発信される文章を読ませて頂いたり、そのご活躍ぶりをずっと拝見していました。

今回のインタビューでは、ちょうどパリに滞在されていた百合香さんにお願いしてブロカントを仕入れて頂き、それにまつわるお話を伺いました。また、パリと東京の二拠点生活、子育てしながらの仕事の進め方など、生き方について、といった話もお聞きすることができました!

パリの蚤の市

パリとつなぎ、久しぶりにお話させて頂いた百合香さん。いい笑顔で相変わらず可愛らしい方です!

まずは、お願いしていたブロカントをいくつか候補を上げながら紹介してくださいました。候補に挙がったのは、古いエクリチュール(書き物)、水牛の角のトレイ、瑪瑙のプレート。写真スタイリングに使えるものをとリクエストしたので、どうやって使うといいか、それぞれの使い方を実演しながら見せて下さって。悩みつつ、選んだのは水牛の角のトレイ(エクリチュール、瑪瑙のプレートは百合香さんのshopサイトで紹介されています、興味ある方はそちらをぜひ)。そしてまずは仕入れた蚤の市のこと、おすすめスタイリングについて伺いました!

添えられていた紙のお香はパリの匂い

加納(以下K):自分ではつい、お花が入るものという観点で花器になるものばかり買ってしまうので、こういったトレイなんかは面白くて、とても気に入りました。

百合香さん(以下Y):お花とスタイリングできるもの、ということで選びました。このトレイは深さもあってそれなりに存在感もあるので、ブーケと並べて撮ってもいいですし、お水も入るので何か一輪、横に寝かせて生けても可愛いと思います。お香を入れたりしても、雰囲気でますしお勧めです!

K:なるほど~!いろんな使い方ができますね、楽しみです。ちなみにこれはどんなところで買い付けたんでしょうか?

Y:これはパリで毎年開催される、一番大きな蚤の市で3区のブルターニュ通りの蚤の市で買い付けました。知り合いのブロカンター(古物を出品する側)によると、この蚤の市に参加できるのは選ばれたブロカンターだけで、ある種のステイタスなんだそうです。特別な活気と華やかさがあって、私も毎年、足を運んでます。規模も大がかりなので一日では周りきれなくて、結局開催している3日間とも行ったという年も何度もあります。今年は自宅の靴棚もここでゲットしました!選ばれたブロカンターたちが出品する古いものは興味深いものが多いんですが、この水牛の角のトレイはまろやかな色合いや、艶感、いろんな用途に使いやすい形に惹かれて購入しました。

K:作られた場所とか、いつくらいに作られたものか分かりますか?

Y:作られた場所は、すみませんはっきり分からないですが、牛の角はオランダが主流なのでその辺りかな?年代も分からないんですが、そのブロカンターが他に出していたものの全体的な雰囲気を見ると、比較的新しめのものかと思います。手作りによるものとのことでした!

牛の角はオランダが主流とは初めて知りました!そしてそこから始まる空想、、なんとなくアフリカなイメージだったので、オランダが旧宗主国だった植民地時代の名残かしら?などと想像が広がります(私の勝手な連想で、歴史的事実に基づいたものではありません)。ひとつのものから、その来し方を想像して物語を作って楽しむ。ワクワクします!古いものが好きなのは、そんなストーリーが背景に見えるから、といえるかもしれません。

K:パリでは、蚤の市の開かれる場所とか曜日は決まっているんですか?

Y:はい、 パリの蚤の市の情報を取りまとめているサイトがあって Vide-Greniers.org というんですけど、そこで見れます。ヴァンプとかクリニャンクールとか、有名なところは大抵、毎週末やってますし、他も大体土日が多いですが、結構いろんなところでやってます。ブロカンターにも団体があって、その動きも見ることができます。場所によって、住んでる人とかに合わせているのか、出てるものの内容も変わるんですよね。16区エッフェル塔の方、高級住宅街みたいなところだと、お高いものだったりお金持ちのヨーロッパ人が好きそうな仏像とか笑、アートとか、見るのは楽しいけど買うにはちょっと趣味が違うなあということも。11区に住んでいるんですが、10区、11区の活気があるというか、高級感というよりは今っぽいエリアだと掘り出し物があったりするので好きです。新進気鋭のクリエイターなんかが最近集まるピガール、モンマルトルの丘の下、治安が悪いと言われていたエリアが最近熱くて、流行りが北上していると言われてます。

K:パリにもやっぱり場所の流行りがあるんですよね。

Y:そうですね、パリも昔はサンジェルマン・デ・プレのあたり、そこからマレ、北マレ、メルシー(有名なセレクトショップ)のある辺りですね、そこから少し北上してピガールの下の方、サウスピガールっていうんですけど、そこに出てるブロカントは、その辺りに住んでるクリエイターが出してたりしてて面白かったり。毎回、同じ所に行くというわけではなくていろんな所に行きます。14区20区は安いんですよね。住んでる人の雰囲気とか出てて、掘り出す感じで面白いんですが、旅行の方にはお勧めしにくいエリアです。いつもいいものがあるとは限らなくて、せっかくパリに来たなら、何か見つけて持ち帰ってもらいたいと思うので。でも、たまに大きなものが開かれていると掘り出し物が見つかったりして楽しいです。

これは次のパリ旅行ではぜひチェックしたいサイトとエリアですよね!有名な観光地巡りやショッピングももちろん楽しいけれど、パリジェンヌになった気分で蚤の市を回ってみるのも旅の醍醐味が味わえそうです。ただし、治安状況などの下調べは必須ですので、くれぐれもご注意を。

パリでの生活、そして仕事を心から楽しんでいる百合香さん。そんな彼女に、お子さんとの生活や仕事とのバランスについて質問してみました。

生活=仕事

百合香さんも働いていたハイセンスなパリのショップ

K:子供が小さい時って、なんか変なパワー出ませんか?時間が無いなりに、何かやりたいというか。私はそうでした笑。お子さんが生まれる前と後で、何か変化したことはありますか?

Y:日本だと実家なので、ほぼ何も変わらないです。仕事の日は母に預けて、全然変わらずに仕事してます。泊りの仕事は受けないようにしようと思ったことぐらいかな。受けることはできるんですが、なんとなく、、前に二日連続で地方に行く仕事があった時、泊ってもいいんだけどと思いつつなんとなく帰ってきた、っていうことがありました。パリではまだ保育園に行けないので、24時間私がみています。それもあって、今のところパリではお花の仕事はほとんどしてません。でも書くこととか、ブロカントの買い付けとか、いろんなことに興味があるので、生活としてはすごく変わったと思いますが、仕事の面ではそんなに変わってないです。例えば、ブーケを束ねて届けるとか、レッスンとか、お花の仕事だけやっていたらそれができないことにすごくストレスを感じたかもしれないですが、ライフスタイルみたいなものを提案していくのが目標で、そういう仕事をしているので、公私の境目が無いというか。

K:なるほど、その中で出来ることをやって、子育てもひっくるめた全てを発信していく、という感じなんですね。なんていうか、生き方がとても軽やかに感じます!

Y:まあでも、ずっと家に居て子供の相手だけしてる時間が続くとストレスもたまるんですけど、結構、簡単に機嫌を直すんです笑。ずっとため込んで鬱になるみたいな感じではなく、イライラしていることに自分で気が付いたら自分で自分の機嫌を取るようにする、っていうのは前よりも上手くなったかもしれないです。

K:なかなか、それって出来そうで出来ないことですよね。

Y:すごく小さなこと、例えば私、料理が苦手で離乳食作るのも大変で。作り終わると自分のご飯はもういいや~って感じになるんですけど笑、一食しか食べてないとか、コーヒー飲みたいけど豆を挽くひと手間に時間が取れないとか、そういうことがストレスになったりします。でも逆にそれができたら、それだけで達成感を感じることができるというか。すごくちっちゃいことです。今日はカフェに行こう!とか、小さなご褒美を決めた段階で満足するんです。結局行かないこともあるんですけどね笑。夫がタピオカドリンク買ってきてくれたとか、それくらい小さいことで、前よりも幸せを感じやすくなってます。

今までは当たり前にできたことが、子供が小さいうちは特に、頑張らないと出来ないことに変わってしまう。それは結構ストレスのたまることです。でもそこを逆手にとって、小さなことができた自分を褒めてあげることで感情を上手くコントロールする。出来ないことを数えるよりも、できたこと、嬉しかったことを数えたほうが幸せだ、という点にフォーカスし、切り替えができるのはさすがだな~と思いました。これは今日からでも真似したいことです!

子育ても楽しむ様子がうかがえる百合香さん。そして花仕事が思うように出来ない中でも、工夫しながらご自分の仕事も着実にこなしています。いま連載してみえるフィガロジャポンのブログでは、家族との日常で感じたことや、パリの今を百合香さんのフィルターを通して綴っていて、とても素敵。まさにライフスタイルを発信するということを仕事にされています。そういった有名雑誌での連載や、撮影のフラワースタイリングなど、皆が憧れるお仕事は何がきっかけで始めることができたのかな、、そんなこと聞いちゃダメかな、いやでも聞きたい!と葛藤の末に笑、どうやってお仕事をゲットしたのか?というあたりを伺ってみました!

自分を知ってもらう

雰囲気を変えて撮影

K:百合香さんはブログやnoteなどいろいろと書くことでご自分でも発信されていますが、今連載中のフィガロジャポンのお仕事なんかは、どういうきっかけで始められたんですか?自分から動いたとか、何かありましたか?

Y:フィガロに関しては、パリで仲良くなった同い年のフォトグラファーの子がいるんですが、その子を通じて私のポップアップにフィガロの編集者の方が来てくださって、お話したら意気投合して。そこからです。Instagramとか見てくれて、何かやりたいんですって私も言っていたんですが、具体的にこちらから提案したわけではなく。そうしたら向こうから、花瓶とか好きそう、いろいろ知ってそうだから花瓶とお花について何か書いてくれないか?って。そうして書いたものを気に入ってもらえて、ブログのお話も頂きました。

K:他にもCDジャケット撮影のフラワースタイリングとか、いろんな場面でお仕事をされてますよね。それは人とのつながりでオファーをもらったりすることが多いですか?

Y:ジャケットは、フォトグラファーの方が何かで見つけて下さって、向こうから。その方がらみでお仕事を頂くことが多いです。花が好きなのかな、花が絡む時にけっこう呼んでくれたりします。あとは編集部の人からとか、スタイリストさん、ブランドさんから来るときもあります。

K:百合香さんが発信されているものを見てくれて、オファーが来る?

Y:撮影だと、ほぼ全部Instagramですね。きっかけとしては、作品撮りをしていたので、それを載せているのを見てくれて、声をかけてくれたのかなと思います。最初は、私が良いなと思うお洋服のブランドのポップアップショップに行って話をさせてもらって、じゃあ撮影とかあったら声掛けますねと言ってもらえて。その後、実際に声がかかって、作品を撮ることをやり始めたんですね。ギャラとかもなく、みんなでお金を出し合って撮影も自分たちでやって。もともとそういうことがやりたかったので、感性が好きだなって思う子と一緒に。それをInstagramにあげたのを雑誌の人が見てくれてお仕事をやらせてもらい、そうしたらそれを見てくれた人がまた連絡をくれて、、という感じです。作品撮りをしてInstagramに載せたことが、何か行動したことといえるのかな。お花もレッスン主体でやるならブーケを載せるのでいいと思うんですけど、撮影の仕事だと、過去に載せた写真を見て声をかけてくれることが多いので、花だけ載せるよりも、こういう仕事をしたいなっていう目的に沿ったフラワースタイリングで作品撮りをして発信していくと、見てくれた方も声をかけやすいのかな、と思います。

K:世界観、という事ですね。花と合わせるとどうなるか、っていうのを見てもらうという事ですね。

Y:例えば編集の方だったら、作りたいページの想像がつきやすいかなと思います。化粧品とか鞄とか、何かモノを紹介するページを作るのに花を使いたいなと思ってイメージを探しているとすると、花単体だけでなく、花を使ったスタイリングの作品を載せていると、出来上がりの全体像のイメージをしてもらいやすいかな、って。すごく人気のお花屋さんとかだったら、ブーケが写ってるだけでもお話来るかもしれないですけど。

K:確かに、ブーケだけじゃ大きさもわからなくて、人が持っていたほうがわかりやすいとか、そういうことありますね。

Y:一人で細々とやっているので、差別化じゃないですけど。見てもらって合わないと思われたらそれは仕方ないと思うんですけど、まずは見てもらわないと始まらないので。ネームバリューがあるわけでも、店舗があるわけでもないので、こういう人なんだな、こういう世界観をもった人なんだなって見てもらうきっかけがあるほうがいいと思って。たぶんお花だけ載せていたほうが、Instagramのフォロワー数は増えると思うんです。ギャラリーを見にいってお花だけ並んでると綺麗だし、お花のアカウントなんだって一目でわかって、わあ素敵!ってフォローもしやすい。でも私は、花を綺麗だと感じる感性というか、ライフスタイル全体や世界観を深く伝えたい、っていう気持ちがまずあって、花だけでなく、多面的に発信することで、私ならではの世界観といえるものを表現したいと思っています。

K:確かに統一感あったほうがきれいで、ぱっと見て映えますよね。百合香さんのギャラリーも、花だけではないですけど全体的に統一感があって素敵だと思います。

Y:そうですね、統一感。私も、お花だけ載せたほうがきれいかもしれないけど、それでは差別化はあまり出来ないかなって思うんです。子供の写真なんかも載せてて、ぱっと見は色々なものを載せてて何してる人かわからないかもしれないけど、ちゃんと見てもらって、世界観が好きってなったらすごいファンになってもらえるかな、と。それにブランドさんとかエディターさんとか、感性や世界観が企画のコンセプトと合うかどうかを見ているような方、そういう方へ発信したいときには自分の感性や世界観が分かるように発信する必要があるかなと考えて。花単品というよりは、空間づくりとか、ライフスタイルとか、いろんなことをやりたいと思っているので。私のギャラリーが統一感あるなら、それは好きなものしか載せていないからだと思います。

K:よく考えて動いてらっしゃいますね。でもライフスタイルというと広いですよね。今後のお仕事は、例えば花じゃなくてもいいのかな?

Y:ん~。。。書くこともたくさんしたいので、、でもやっぱり花仕事は中心にあってほしいです笑。

私のストレートな質問にもすごく丁寧に答えて頂き、こんなにも具体的なお話を聞かせて頂きました!とても参考になりますよね。でも、真似すべきは百合香さんのやっていることではなくて、冷静に自分をみて自己プロデュースしていく、という根っこのところ。もちろんInstagramの使い方等は、なるほど!と思いながら私も聞かせて頂きましたが、自分が目指すところをきちんとわかっていないと、迷走しちゃうかな、とも思いました。自分がありたい姿を思い描き、それに向けて、じゃあ何をするかという事を考えて動いていたから、チャンスをつむことができた百合香さん。あとは瞬発力と熱意。パリで由美さんに会ってすぐに花留学を決意し、実現させたところにも、貫く強さを感じます!

ご主人がパリで活躍されているパティシエさんということもあり、百合香さんはパリと東京を行き来しながら活動されています。そんな二拠点生活についてと、そこから思うこと、今後についてのお話を伺いました。

パリと東京

空港はワクワクする場所

K:今、パリと東京を行き来されていますが、大変に思うことはないですか?

Y:ないですね、どちらも好きなので。東京のほうが仕事が多いので行き来したいけど、子供の学校のこととか、家族離れ離れもなんなので今後はパリを拠点として、たまに東京に帰る感じにしたいと思っています。これまでは東京のほうが多くて、年4回のパリのファッションウィークに合わせて渡仏する感じでしたが。これから頑張っていこうと思っています。

K:行き来することは苦にならないし楽しいということですが、パリと東京に拠点があることは仕事の上でプラスになっていますか?

Y:パリコレの仕事をしているとか、海外の雑誌に載ったという事は、東京の仕事ではプラスになっているかなと思います。東京とパリの仕事ではできることや方向性が少し違って。パリでの仕事、パリコレにかかわれるというのは、昔から憧れがあってやってみたかったこともあり、世界中から人が集まって時間もお金も労力もかけているクリエーションの賜物、みたいなことに端っこでも参加できていてとても楽しいです。日本では慎重になってしまうようなこともポンとできたりとか、パリの方が名前にとらわれず無名でも気に入ってもらえたら採用してもらえたりとか、そういう仕事の仕方、リズムみたいなものがすごく心地よくて。東京では大きなお仕事を頂くことも多いですし、レッスンしたり、一人ひとりの方との個々のつながりなんかが楽しい。いろいろやってますが全部好きなことだから、自分の中ではバランス取れてます。

K:いろんなことを並行して行っていくのは、ある種の器用さみたいなのが必要なのかなって思うのですが、バランスをとるために何か心がけてたりしますか?

Y:なんでも面白そうと思ったらやってみるんですが、やってみてあんまりだったなと思うことは色々あって。例えば沢山作品を作って売る、みたいなことは向かないかもしれません。ポップアップとかやらせてもらってありがたい経験なんですが、テンションが上がりきらないというか。そういうものはそっとやめていきます笑。だから器用にこなしているわけではないと思います。今までやったことないから、とか、私に合わないかも、とかいきなりシャットアウトはしないですが、そうやってきて好きなことだけが残ってきているので、声をかけて下さる方もそんなにずれた依頼はしてこなくなるというか。

K:今後も、自分のやりたいことを突き詰めていって、ライフスタイルを発信していくことがしたい、という感じでしょうか。現状に満足していますか?

Y:そうですね、書いたり、撮影のスタイリングをしたり、今やっているようなことをもっとやっていきたいです。あとは、何か心躍るようなものがあればトライしてみたいと思います。今を高めていきたい、もっと質を高めたいというか成長したいというか。すごく変えたいという事はなくて、概ね満足しています。仕事に限って言えば出産してからセーブしているところもありますが、子育ても一続きというか人生の一部というか、、なので人生に満足しています。子供のことも書くことが仕事になっていたりするので、発信して行けたらいいなって思っています。

やっぱり、百合香さんはとても軽やか。お話を伺っていく中で改めてそう感じました。ポジティブに人生を謳歌している姿が、見ていて本当に気持ちいい!憧れちゃいますよね。でも、子育てと仕事の両立は大変よ!って思う女性も多いと思うのです。もう少し、その辺りを突っ込んで聞いてみたいと思い質問をしてみました。

K:女性が働くということに、日本ではまだまだ制度も理解も追いついていない部分もあると思うのですが、百合香さんは特に困難は感じていないのかな、と感じました。そんな風に仕事も子育ても楽しめているのは、何が良いんだと思いますか?例えば二拠点生活とか、周囲から反対とかはなかったですか?

Y:結構好きなことしかやってこなかったんですよね、笑。でも二拠点生活とか、遠距離別居とか、面と向かっては言われないですけど、赤ちゃん連れて大丈夫?みたいな空気を感じることはあります。でも全く、私は気にしないです。ほんとに日本はおかしいなって思うんですよね。独身でいれば結婚しろ、結婚したら子供を産め、産んだら産んだで専業主婦を馬鹿にされ、社会に出ようとするとそれはそれでダメって言われて。産め産めっていうのに、子供つれて電車に乗ると白い目で見られたりとか。それは本当におかしいと思っていて。

K:同感です。百合香さんの世代でもまだそういうのあるんですね。。

Y:少し上の世代の方からは感じることも。でも幸い、両親がそういうことを言わないので。そこは大きいかもしれないです。自分の中では、それはおかしいという思いがあって、変えるべきだ!と思っていたので。実際に出産をして経験したことからそう思ったり、日本の社会問題というかパラドクスというか、そういうことを考える機会も増えましたし、自分でも書けたらいいなと思っています。やっちゃいけないこととは思っていなかったので。例えば、私が泊りがけで仕事しないって決めたのは、子供がいるのに泊りで仕事なんかしちゃダメだと思ったからではなく、私が帰りたいと思ったからで、そういう母性なんかは自発的なもので社会が決めることではないと思います。自分らしくというか、そんなの周りがおかしい!くらいに思ってもいいんじゃないかと笑。

K:私は私でいいんじゃないか、って胸を張れるようになったのはこの年になって、やっとという感じです。住んでいる地域とか、世代とかあるかもしれないですが。

Y:世代とかはあるかもしれないですね。でも、一人で子育てしていて煮詰まってしまう気持ちも分かります。全体的には楽しく生きてますけど、家事とか子供との時間ばかり続くと少し嫌になることもあります。でもその不満とかを積極的に口にしようとは思わなくて、言うとしたら家族くらいです。家族にはすごく支えてもらっていて、例えば母なんかに、こういうのやったよ、って仕事の報告をすると必ず褒めてくれるんです。ファンでいてくれる。夫も、褒めてくれるし落ち込んでいると励ましてくれます。

何のストレスもなく楽しくやってらっしゃるんですね、って言われたら、いやそんなことないですって言いますけどね~と、笑いながら話してくれた百合香さん。彼女の軽やかさは、自身でも言われていたように家族のサポートのおかげでもあるのでしょう。でもきっとその支えが得られるのは、百合香さんもまた、家族への思いを何かのかたちで返しているからなんだろうな~と、素敵な関係性にほっこりしました。そして、そのしっかりと築かれた土台の上に立ち、強い気持ちをもって歩く姿に明るい希望のようなものを感じました。私たちはつい、世代や性別といったわかりやすいグループに自分を当てはめ、分類してしまうことが多々あります。そこから見える風景は、狭まっていたり歪んでいたりすることもきっとある。百合香さんと話していて目に浮かんだのは、そんな縛りのようなものから自分を解放して、もしかしたらそんな縛りすら元から存在しないようにボーダーレスに生きる姿です。これからは、それが当たり前になるといいな、当たり前にしていきたいな。そんなことも思いました。

お仕事、暮らしぶり、そして生き方まで。幅広いお話で、本当に楽しいインタビューでした!あえて世代の話をするならば、私も40代後半になり、それなりにいっぱしの人生経験を積んできたようなつもりになっていましたが、若く活躍されている方との対話からは、また新たな視点を持つこともでき、とてもいい刺激になりました。百合香さん、どうもありがとうございました!

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