「ここ」を楽しむ
地産地消、という言葉がありますが、最近お花でもそれを意識するようになってきました。愛知県は花農家さんも多く、もともとそういった素地があるとも思いますが、さらに一歩進めて、例えば庭に育った草木を摘んでブーケにいれたり、知り合いの方から剪定枝を分けてもらって装花に使ったり、より身近な植物を使って素敵なものをご提案できたらいいなと思うようになりました。
そう思うようになった始まりは、はっきりとはわかりません。お花を通じた様々な出会いから受けた影響もたくさんあります。でも、家を建てて、夫の実家である土地に定住したことがきっかけになったことは間違いないと思います。住み始めた当初からこの庭で何かしたいという気持ちがあり、この10年の間に、庭と畑のある生活に少しずつ馴染んできました。広すぎる庭はどう整えていいかわからず草を取るのが精いっぱい、畑も義母が病気をしてから以前のようにたくさんの野菜を育てるというわけにもいかなくなり、荒れてしまった時期もありました。でも子供たちも成長して少しずつ余裕が生まれ、またコロナ禍の予想外の恩恵として、夫がテレワークで在宅時間が増えたことにより、畑の世話をすこしずつやり始め、庭のこれからの姿を思い描けるようになってきました。
どこかから飛んできた種から、毎年、背丈より高く茂り、咲き誇る秋桜。ただ咲かせて散らせるだけだった花も、花摘み会やろうかな?とのつぶやきに予想以上のご要望を頂き、来年はやってみようかなと考えたり。
冒頭の写真にも使ったツルウメモドキ、紫式部、コデマリなどの木、そしてハーブ。ゆずや金柑など、実を結ぶものも。庭はたくさんの魅力的な花材の宝庫です。最近の流れとしてより自然を求める流行りのようなものもあり、庭からのものを使ったブーケは毎回、とても人気。SNSに載せるとたくさんのいいね!をもらいます。規格外の動きや不ぞろいな花、虫食いにさえも植物の息吹を感じられるようです。
いつも仕入れに行く名古屋の市場では、自分が栽培しているもの、野山から採ってきたものを売る方たちがいて季節感あふれる面白い花材が手に入ります。のぶどうは儚い命ですぐに枯れ始めるのですが、その自然な命の営みがブーケにドラマティックな表情をもたらします。こういった少量の、流通にのらない花材を売る市場のムッシュは、いろいろな植物の名前や植生を教えてくれる先生でもあります。その土地ならではの面白さです。
美しいバラやダリアなどと合わせて、こんな野趣味あふれる花合わせでパリスタイルの洗練を魅せることが面白いなと思うのです。私が好きなパリスタイルも、自然あふれるシャンペトルなデザイン。シャンペトルとは田舎風とか田園風といった意味ですから、これは正しいパリスタイルと言えるかも?なんて思いながら花合わせを愉しんでいます。
数年後には、庭と畑のあるロケーションを活かした場を作りたいと考えています。今のレッスン場所は物置だった部屋を改装、DIYで手を加えながら少しずつ整えているのですが、さらに思い切ったリフォームで多目的に使える場所に変身させます。そこにはお気に入りの家具やアンティーク、好きな作家さんの作品をちりばめたい。本も並べて心地よく過ごせる場にできるよう計画中です。まだ具体的なお知らせは何もできないのですが、コツコツ準備していますので楽しみにしていてください!
パリや旅先で受ける刺激や学びは大切に継続しながら。楽しみながら作っていきます。